保育者の感性を育むために

時をとめて心をよせて                 
 - 日々の保育を楽しむ方法 -
                作詩:ウレシパモシリ 高橋京子

見上げてみましょう
いつも忙しく目の前しか見ていないあなた
お散歩に出かけた時には 子どもと一緒に 空を見上げてみましょう
草の上に 寝転んでみましょう
その日の 空の色 雲の動き おひさまの輝き 風の匂い
子どもに寄り添い見上げてみれば
いつもの風景が まったく違って見えるでしょう
大きく息を吸って 雲の動きをゆっくりと追ってみると
隣に寝ころぶ子どものきもちが きっとわかってくるでしょう

のぞいてみましょう
お散歩の道を ただ通り過ぎていませんか
足もとの虫たちの 命の営みを見ないまま
子どもが見つけて 手にする虫が
どこに住み どんな顔をしているのか
葉っぱの裏に かくれんぼしている小さな命に
気づかないまま 通り過ぎている日々

子どもは気付いています
子どもは あそびの中で気づいています
小さな命の営みの不思議さに
春を待つつぼみの中に 芽が出る木の実の中にも
命が育まれていることに
雨上がりには 
葉っぱの上にちょこんと乗ったひとしずくが 
宝石のようにキラキラ輝いていることに
気づいてみたら
きっと 小さな世界への好奇心が ふくらんでくることでしょう

耳をそっとすましてみましょう
毎日の忙しい生活の中で いろいろな音や声に囲まれているあなた
お散歩に出かけた公園や 園庭の隅っこで
子どもと一緒に目を閉じて そっと耳を傾けてみましょう
風の音が聞こえますか
鳥の声が聞こえますか
子どもと一緒に目を閉じて 耳を傾ける習慣をつけていくと
不思議と街中の雑音の中でも
木々を揺らす風の音を
空高く舞う鳥の声を
自然の優しい音や声を
あなた自身の耳で 聞き分けることができるようになるでしょう
きっと 声なき子どもの声も
あなたの心に届いてくるでしょう

自分の手のひらで触れてみましょう
ただ通り過ぎているだけでは 
知っているようで じつは知らないこともあるでしょう
テントウムシが 指先まで上がっていくと
羽をひろげて お日さまに向かって飛び立つことを
ハートの形のドクダミの葉っぱは
手(た)折(お)ってみると 臭いにおいがすることを
ちょろちょろ動くダンゴムシが
手のひらの中で コロコロまるまって転がる姿を
お日さまがあたる小石は とってもあたたかいことを
枯れた茶色の落ち葉でも 拾ってお日さまにかざしてみると 
オレンジ色に輝くことを
踏むとザクザク音がする霜柱だって
そっと手に取りお日さまにかざしてみると キラキラと輝くことを
ふるいにかけた砂場の砂が 手のひらにサラサラとこぼれ落ちる感覚を
毎日の中で起こっている 子どもたちのたくさんの感覚の出会いを
あなた自身の手のひらを通して もう一度出会い直してみることで
いつしか忘れていて 使わなくなっていた感覚を
新鮮に呼び戻すことができるようになるでしょう

そうすると
日々の保育の中の 当たり前にある風景の中でも
見るもの聞くもの すべての世界が
なんだかワクワク キラキラと
新鮮な感覚をもって 生まれ変わってくるでしょう
日々の保育を楽しむ方法は
あなたが持っているのに いつしか使わなくなってしまった五感のすべてを
もう一度使いなおしてみることです

 2017年春

保育現場で頑張っていらっしゃる皆様に贈ります。

作詩にあたり、
ウレシパモシリ顧問・千葉大学名誉教授
首藤久義先生より、ご校閲をいただきました。
心からの感謝をこめて。